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横山篤司 先生(2)

「幹細胞はマイクロドクターのような働き」

横山篤司先生2

J: 実際の治療において、オプションとしての免疫細胞治療の手応えはいかがですか。

横山:十分ありますね。手ごたえがあります。リンパ球療法を行った飼い主様は100%満足しますね。また、導入したことでスタッフ自身のハードルが上がり、そういうレベルまで求められているというプレッシャーも含めて、うまくレベルアップしなきゃいけないという気持ち・行動につなげてくれている。治療の内容だけでなく、病院のスタッフの意識レベルアップにつながっているという意味でもいい手応えを感じています。三大治療をきちんと理解して使いこなしたうえで初めて免疫療法が生きてくるのです。

J:オーナー様へのご説明はどうされていますか?

横山:最初の頃は、オーナー様にはこういう治療でいいですか、と確認していました。症例としては、生死を彷徨っている末期の状態の子が多かったですね。がんになる理由は老化による免疫力の低下か、それに伴う細胞のコピーミスが多い、そうだとするならばやっぱり免疫を上げるといいんだよね。というと納得してくれます。現在では、そういった生死さまよっている子が今リンパ球療法で元気になっているというデーターが院内で出てきているので、それを過去のデーターとしてお見せして、お話するようにしています。

横山篤司先生4

J: 間葉系幹細胞についてお伺いします。先生は幹細胞を用いて、内科系の疾患や免疫介在性の疾患に取り組んでいらっしゃっています。中々他の報告がない中で、非常に精力的に取り組まれている印象を受けます。

横山:免疫介在性の多発性関節炎や膵炎、肝炎、ドライアイ、角膜潰瘍、ぶどう膜炎、外傷など、色々な症例に対して間葉系幹細胞の効果がでてきています。多発生関節炎の症例では、2年間ステロイド使い続けていて身体がボロボロでCRPも高い状態で維持されていました。その間小康、悪化を繰り返し、何度も生死をさまよっていたんです。間葉系幹細胞には免疫抑制作用があるいうことが知られており、飼い主様にリスクをお話した上で、同意の上、脂肪を採取して幹細胞を投与しました。CRP値が下がって、調子がとても良くなって飼い主様もものすごく喜んで下さっていました。驚いたんですが、ステロイドを処方しなくても元気に過ごせる状況を3ヵ月続けることが出来ました

あとは肝疾患ですが、肝酵素の激しい上昇を抑制している手応えがあります。肝酵素が上がっても肝炎とは言えない場合もあるので、そこは難しいところではあります。他の肝疾患の症例でもステロイドを使っていないのに、幹細胞投与後に一定期間急激な上昇が抑えられたり、肝酵素の数値が上がってもCRPは維持されていたり、結果的に患者のQOLが改善するというケースが多いですね。そのメカニズムとしては、投与した幹細胞が様々なサイトカインを分泌することで、いわばマイクロドクターのような働きをして、炎症を抑制したり、肝繊維をとかしたり、血管再生を促したりしているのだと思います。つまり、脂肪幹細胞が肝細胞を再生するというより、脂肪幹細胞による「細胞療法」という考え方のほうが理論がとおります

横山篤司先生2

横山:幹細胞の働く原理を理詰めで考えていくと、慢性化している疾患では炎症もなくなっているので、正直厳しいと思います。急性の腎不全や腎炎なんかだと幹細胞投与の適応になると思います。僕は慢性腎不全の場合、治療するというよりQOLを上げるために幹細胞療法をやっています。幹細胞の効果を期待するものであれば外傷、急性の疾患などだと思います。幹細胞の出す様々なサイトカインがまず一番大きな役割を果たし、行き着いた先の臓器の細胞に分化する幹細胞もゼロではない。現在は幹細胞のトランス分化(胚葉を超えて分化すること。間葉系幹細胞は通常中胚葉系だと考えられている)の報告も今たくさんでてきていますし、そのこと自体は否定されるべきものではないと思います。そして、なんといってもこういう治療が一般の病院でもできるというのが素晴らしいですね。J-ARMさんのシステムは毎回細胞の数の確保もできているし、根拠のある細胞を毎回増やしてきている。全く同じ材料をつかえばいい。こういった治療を施設があれば誰でも行える。我々のような臨床家にとってこれは一番大事なことなんですよ。

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