J:細胞治療を導入されて8ヶ月、これからだとは思いますがスタートとしていかがでしょうか。
有井:幸いなことにインキュベーター(培養装置)は常に稼働していて、多いときは3検体同時に培養していた時もあります。今のところ電源をオフにするといった事態には至っていません。
J:実際導入されて病院全体に何か変化はありましたか
有井:病院の特色を出す武器には今のところなっているのかな。という感じがあります。最終的に細胞治療は行わなかったのですが、細胞治療の提案をきっかけに主治医として通って下さるようになったペットの飼い主様もいらっしゃいます。
細胞治療に関してのお問い合わせを頂くケースもあります。他院でヘルニアと診断されたので「ヘルニア 治療法」の検索でJ-ARMさんのホームページで見つけられて、最終的に当院のホームページを見つけられたという方もいました。結果的に治療法に手立てがあまりない状態の子を何とかしてあげたいという熱心な飼い主様のお役にたてている手ごたえは感じています。
J:今後の細胞治療をどのように展開されようとお考えですか
有井:やはり今後は幹細胞治療も取り組んでいきたいですね。免疫細胞治療はマイルドですが、幹細胞ははっきりした効果が出やすいと考えています。治療が運用しやすくなるので凍結解凍システムも行ってみたいなとも思っています。脂肪まで採取する際の麻酔に抵抗を持たれる飼い主様もいると思うので、他家移植もできれば細胞を準備する上で便利ですね。敷居を下げないと使えるものも使えないので。その辺をいかに自分の中で構築していくか、インフォームドをどのように行っていくといいのか、ということが今後の課題です。
J:今後の細胞治療についてJ-ARMに期待することを教えて下さい。
有井:結局効いたのか効いてないのか、やったのがよかったのか、やらなくてもよかったのかといったようなあやふやなところも多い治療法ではあるので、その辺をもう少し明らかな科学的な論証ができるようにやっていきたいと思います。苦しんでいる子を救えるのはいいのですが、その辺のエビデンス的なところも含めて自分なりに発信できるようにやっていきたいとは思います。
細胞治療は今でも新しい分野だと思いますし、疑問を持っていらっしゃる先生も多数おられるので、効いた・効いていないだけではなく、治療に携わっている先生方と一緒にスキルアップし、もう少ししっかり検証できるような形でこの治療自体を底上げ・発展できればいいかなと思います。
J:先生と同じく細胞治療を検討される若い先生にメッセージをいただけますか。
有井:細胞治療は使い方によってはいい武器になると思います。一方、場所もとるし、費用もかかるので使えなければ新規開業されたばかりの先生にはお荷物となるリスクもある。病院としての独自性を出せるので魅力的なのですが、売り込み方とか使い方をしっかり考えてから導入された方がいいのかなと思います。
自分の場合は地域の患者さんのニーズがあるかどうか、近隣でなくても治療法に手立てがあまりない状態の子を何とかしてあげたいという熱心な飼い主様のお役に立てているかどうかを考えて、それらについて見込みがあると思い、導入を決めました。また、近くでこのような治療をあまり行っていないことから、近隣の仲の良い先生に紹介の話は持ちかけました。実際今回行った1例も他院からの紹介です。この病院にとって細胞治療はそれなりに武器になっていると思います。
J:最後になりますが、同じくがんに対して現在闘っておられるワンちゃん猫ちゃんの飼い主様に先生からメッセージを頂けますか。
有井:活性化リンパ球療法は、腫瘍への対処療法としては大きな副作用が全くないというのが獣医師としての実感です。もし自分の飼っている犬や猫ががんになってしまったとしてもやってあげたい、と考えています。この治療と出会う前に自分が飼っていたネコを肺の腺癌でなくしたのですが、使っていたら変わっていたのかなと思います。自分の中で活性化リンパ球療法はそういう治療であると感じています。
J:貴重なお話をありがとうございました。
(インタビュー日:2014年12月10日)
羽根木動物病院
住所: 〒155-0033 東京都世田谷区 代田4-10-24 代田プライムコート1F
電話:03-6379-2542
http://hah.jp/