そもそもがんとは
人体はおよそ60兆個の細胞が集まってできています。がんは、この膨大な数の正常細胞のうちのたった一つの細胞が、がん細胞に変化するところから始まります。正常細胞ががん細胞に変わると、次のような特徴を持ちます。
無限に増殖する | 浸潤する | 転移する |
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がん細胞は宿主(患者さん)から栄養をとれるだけとって、ひたすら続けようとします。 | がん細胞はたんぱく質を破壊する酵素を出し、周囲の組織や臓器の壁を食い破って体の奥深くへ侵入し広がっていきます。 | がん細胞は群をなすまでに成長すると、血液やリンパ液に乗って体の別の場所へ移動し、移動した先々の組織や臓器を破壊していきます。 |
こうした性質はがんが成長するに従って現れてきます。がんはその成長過程に即して、「早期がん」「進行がん」「末期がん」に分けることができます。早期ガンのなかでもごく初期のものは「初期がん」、また、現在はがんではないけれどもほうっておけば将来がんになる可能性があるものを「前がん病変」と呼びます。
早期がんとは、がん細胞はあるけれどもまだ浸潤や転移は起こっていない状態です。したがって、手術でがんを確実に取り去ることができ、完治も期待できます。
治療が難しくなるのは、浸潤、転移が起こる進行期以降です。この時期では、がんが体のあちこちに転移していることが多く、手術によって完全にがん病巣を取り除くことが非常に困難となります。また、がん細胞が広がるにつれて、臓器や組織の正常な働きが侵され、患者さんの全身状態も悪くなるという問題も生じます。
このようにがんは進行するにしたがって性質が変わっていくので、治療の取り組み方も初期、早期と進行期以降ではおのずと異なってきます。
がんの治療法
免疫細胞療法全身療法
免疫細胞療法には、特異的免疫細胞療法と非特異的免疫細胞療法があります。特異的免疫細胞療法として樹状細胞療法、非特異的免疫細胞療法として活性化リンパ球(LAK)療法があります。副作用のほとんどない癌治療法として期待されていますが、経費と人手がかかることが問題となっています。
手術局所療法
手術は、がんの病巣を直接身体から取り除くことができます。主に初期のがんに有効で、進行したがんでは、転移がんや微小ながんが残っている可能性があり、完全に取りのぞくことは困難です。また、正常な部分(臓器)も一部とらなければならないこともあるので、それによる合併症がおきたり、生活の不自由が残ることがあります。
化学療法(抗がん剤)全身療法
化学療法は、化学物質(抗がん剤)を用いてがん細胞の分裂を抑え、がん細胞を破壊する治療法です。抗がん剤には、がん細胞を死滅させるとともに、正常な細胞も傷害させてしまうという作用があります。理想的な抗がん剤はがん細胞だけに作用して、正常な組織には作用しないという薬ですが、残念ながらそのような薬は現在のところ存在しません。
放射線・粒子線局所療法
放射線・粒子線は手術と同じく、癌とその周辺のみを治療する局所治療です。手術と異なるところは、臓器を摘出する必要がないので、治療前と同じような生活をすることが可能な治療手段であることです。近年、これらの技術は急速に進歩し、がん組織だけを照射し、周囲の正常組織にはできるだけ照射しないようにすることが可能になってきました。
ホルモン療法全身療法
ある種のがんでは、がん細胞の発育にホルモンを必要とします。そのホルモンと反対の作用をするホルモンを投与して、がん細胞の発育を阻止する治療法です。治療の対象となる主な癌は、乳癌、子宮体部癌、前立腺癌、甲状腺癌、腎癌などです。
分子標的医薬全身療法
従来の抗がん剤の開発は、いかにがん細胞を殺傷するかに重点が置かれて開発されてきたため、がん細胞と正常細胞を区別する力が乏しく、結果として多くの副作用が生じていました。しかし、近年の分子生物学の進歩により、がん細胞だけが持つ特徴を分子レベルでとらえられるようになりました。それを標的とした薬が、分子標的医薬です。
BRM療法全身療法
BRM療法は免疫系をはじめとして、身体全体の働きを調節することにより、治療効果を得ようとする治療です。つまり、がんを治そうとする患者さん自身のもつ力を手助けし、強めるものです。この治療法は単独で行われるよりも、むしろ免疫能が低下してしまう手術や放射線、化学療法などと併用することで、その治療効果を期待します。
その他
血管新生抑制作用のある薬剤
セレブレックス、サリドマイド等
温熱療法
食事・サプリメント