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山内リコちゃんの場合

りこちゃん1

「朝起きたら動けなくなっていた」

J-ARM(以下J):今日は大阪府泉南市ミズホ動物病院の院長である山本先生と飼い主様の山内さまにお話をお伺いしております。山本先生は開業されて30年以上この地で臨床に携わっておられ、細胞治療は約3年前に導入されました。山内さまは当時ミズホ動物病院に通われていた飼い主様でしたが、今動物看護士としてミズホ動物病院で勤務されています。まずは山内さまのご家族であるリコちゃんの治療について簡単にお聞かせいただければと思います。

山内さま(以下山内):リコはミニチュアダックスフントの女の子で5歳です。元気でよく走り回る子だったのですが、朝起きたら動けなくなっており、慌てて病院へ連絡して駆け込み、先生に見て頂きました。原因は椎間板ヘルニア疑いということで診断を受けました。その時はつねっても深部の痛みはなく、その状態は一般的にその後の経過もよくないといわれます。先生にご提案いただいて脂肪幹細胞療法を受けることになり、脂肪に含まれている幹細胞を培養するために全身麻酔をかけてパチンコ玉くらいの脂肪を採取しました。

細胞を採って一定の数まで増えるのに2週間くらいかかるとのことで、その間はお薬での治療を行っていました。治療で痛みは落ち着いたようでしたが立てないことに変わりはなく、回復の兆しも見られませんでした。2週間後、幹細胞が十分増えたので点滴をしました。それから3日後くらいした時、足に少し動きがみられるようになりました。さらにその1週間後にはすでに立てるようになっていました。立ってから歩き出すのは早くて、気が付いたら普通に歩いていました。最初全く足に反応がなかったのを見ていたのでこんなに早く治るとはと驚きました。トイレも自分でできなくて、それまでおむつをしていたのですが、丁度歩けるようになったくらいのタイミングでトイレも行くようになって感動しました。

今では少し右だけがおぼつかない感じがするのですが、走り回ってジャンプできるくらいまでに回復しました。治療を受けたのはもう1年前ですが、今のところ再発はありません。

挿絵1

:ありがとうございます。次に先生にお尋ねします。今回山内様に幹細胞を用いた治療をご提示されたいきさつはどのようなものだったのでしょうか?

山本先生(以下山本):前からよく動く活発な子で、椎間板ヘルニアになるかもしれないからその時は幹細胞治療をしてみようと話していました。

山内:前から先生がそのように話されていたので、椎間板ヘルニアになった時はもう細胞を用いた治療を行うという風に決めていました。実際以前に病院で働いていたときに先生の病院で何例か立てなくなったワンちゃんが回復していた例を見てきたこともあります。

 

J:リコちゃんは山内さまがメインでお世話をされていたのですか?

山内主人がかわいがっておりまして、主人にもその話をしました。決して安い治療ではなかったので最初はちょっと悩んでいたところがあったのですが、私が説得して決断してもらいました。細胞治療を行うまでの2週間、ずっと排尿排便ができなかったので介護をしていました。おむつをしているのでどうしてもおしりに炎症が起こってきたりと、それが原因で通院をすることもありました。ずっとこの生活も大変だということで何とか立てるようにしてあげたいという気持ちがありました。

 

J:いろんな苦労があること、お察しいたします。
山本先生は通常どのようにこの治療自体ご提案されますか。

山本:内科治療(エラスポール)で 2週間ほど様子を見つつその間に細胞治療を選択するか、最初から外科治療を選択するかのいずれかをお勧めします。どちらの選択肢も効果の面ではほぼ同程度という印象です。その上で細胞治療は低侵襲(切り口が軽度で体にとって害の少ない)だ、ということは伝えます。細胞治療は、麻酔をしてパチンコ玉大の脂肪をとるだけなので。あまり遅くなってからでは反応が良くないというのはお伝えしますので、長い期間待ってから細胞治療を行うということはないですね。今回も行うなら早く行う方がいいと伝えました。

 

:これまで先生の病院では椎間板ヘルニアに対して細胞治療を6,7例ほど行っていらっしゃるそうですが、最終的に全て歩行可能になったとのことをお聞きしています。全体として飼い主様は治療に対してどのようなご感想をお持ちでいらっしゃいますか。

山本:満足して頂いていますね。あまり費用のことにこだわれる方はいないです。私個人としてはおまけつきの治療法だと思っています。

 

「おまけつきの治療」

山内:おまけつきといえば、リコも毛がなかった鼻の部分に毛が生えてくるようになってきたんです。細胞治療をはじめてから立てるようになったのと同じくらいのタイミングでした。毛がなくなったのはアレルギーか何かだと思うのですが、今はきれいに生えそろっています。これは何かあるなと思いましたね。

:主症状以外の身体変化として脱毛が改善したや毛艶が良くなったというのは比較的よくお聞きします。実際高齢のワンちゃんであったら幹細胞を投与された後に白髪がなくなって若い時の毛が生えてきた、や若い時のしぐさが戻ってきたというようなお話を飼い主様からお聞きすることもあります。

こういった点が山本先生のおっしゃる「おまけ」のようなことになるのかもしれません。

 

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細胞治療前のリコちゃん↑
:細胞治療はまだ飼い主様にとって「分かりにくい治療」の部類に入るかと思うのですが、どのようにご説明されていますか?

山本:治療の流れは受付にある細胞治療の全体の流れが示してあるパネルを使って説明しています。説明において特に意識していることはないですが、細胞の数はお伝えしますし、育っている培養中の細胞は顕微鏡で見て頂いたりする場合がありますね。一応先端の治療なので興味あるのではないかと。飼い主様は何か育っているんだということはご理解していただきますので。

 

先生が治療を提示された時の飼い主様の反応は山内さんから見ていかがですか?

山内:先生がそう仰るのであればとそのまま治療を受け入れられる飼い主様がほとんどです。細胞治療に限らず割とどんな治療を提案されても、同じような反応ですね。先生と飼い主様の信頼関係が厚いのだと思います。

 

:飼い主様の立場としてお聞きできればと思うのですが、治療にお困りの飼い主様はどのようなお気持ちで治療を選択されているのでしょうか。

山内:やっぱり最初はみなさんこの治療のことは知らないですよね。私もそうでしたが、飼い主は分からないまま治療には入っているとは思うんです。いくら専門的なところの説明を受けても理解しきれないところがある。ただ勧めて下さって少しでも可能性があるのであればそれにかけてみたいという気持ちがある。それは先生と飼い主様の信頼感ですね。それが不安を解消してくれる。

後は飼い主様が治療を選択される際に、どれだけその情報に触れる機会があるかということは大きいと思います。飼い主様は他の犬がどのように治療を行ったかを聞いてみたいと思われているのではないかと思います。私はすぐ治療を行う決断しましたが、そうはいっても他の治療を受けられた飼い主から聞いてみたかったですね。分からないまま始めたところもあったので。

山内:山本先生が椎間板ヘルニアになったワンちゃんの飼い主様に細胞治療のご説明するときに、実際私が一飼い主として体験談をお伝えすることもあります。こういう治療を受けて過去にこういう事がありましたよと。飼い主様が気にされているのは結局今はどうでどうなっているのかということだと思います。

私の親戚でダックスを飼っている方がいるのですが再発を重ねて今までで2回手術をしています。また再発するのではないかと不安に感じているそうです。是非知ってもらいたいということでこの治療のことを伝えました。治療に困っているような方がいても伝えてあげたいですね。

 

写真2

 

:最後に先生の細胞治療に対する考えをお聞かせください。

山本:飼い主様のニーズに答える手段として色々選択肢を提示できた方がいいと思って細胞治療の導入を決めました。病院で提示できる選択肢が増えた方が飼い主様の満足度も上がると思っています。

ただ治したいということがあれば一定期間でしかるべき決断をすることは大切だと思っています。迷っている間にどんどん時間が過ぎて、そうすると治るものも手遅れになってしまうので。

 

:飼い主様と信頼関係をつくりながら、お伝えすべきことはしっかりお伝えされるところが治療に満足していただいている要因なのかもしれないですね。本日はありがとうございました。

 

ミズホ動物病院
〒590-0521 大阪府泉南市樽井2丁目16−5
http://mizuho-ah.jp/

<インタビュー日:2015年7月2日>