活性化リンパ球療法の有効性評価
【活性化リンパ球を用いて、担癌犬のQOLを改善する報告が発表されました!!】
Quality of life-improving effect of autologous ex vivo expanded cytotoxic and opioid-producing lymphocytes for dogs with cancers.
Mitani K, Ito Y, Takene Y, Hatoya S, Sugiura K, Inaba T.
Veterinary Immunology and Immunopathology 238: 110292 (2021)
活性化自己リンパ球療法
- がんに対する免疫療法の1つです。
- がん罹患犬から末梢血リンパ球を分離し、抗CD3抗体およびインターロイキン(IL)-2と培養することにより、がん細胞への傷害活性を高めた活性化リンパ球を作製します。
- リンパ球を採取したがん罹患犬に投与して治療します。
- 本治療により、B細胞性リンパ腫の延命効果やQOLの改善が知られています。
これまでの有効性評価における課題点
- QOLを評価するための客観性を有した基準がありません。
- QOLの改善が治療効果の指標として認められていません。
飼い主様の苦痛
客観性を有するQOLの評価法
Canine Health-related QOL Survey-15(CHQLS-15) Lavan., Vet. J. 2013
特徴
- 飼い主様が容易に評価可能です。
- 疾患固有の評価項目がなく、客観的に評価可能な日常生活に関連した健康状態を定量的に捉えることができます。
- 常時観察可能な飼い主様が評価することで、評価者の変更がなく、一貫性のある基準で評価できます。
活性化リンパ球の能力
- がん細胞への攻撃能力を高めるIFN-ɤ産生
- 鎮痛作用を発揮するオピオイドの一つであるproenkephalin産生
活性化リンパ球の培養から治療への流れ
- 悪性腫瘍に罹患した58頭の犬から採取した末梢血から密度勾配遠心法によって単核球細胞(PBMC)を分離
- 固相化抗イヌCD3抗体およびヒト組換え体IL-2とともに2週間培養して活性化リンパ球を得ました。
- 治療においては、得られた細胞を50mlの生理食塩水で懸濁し、約1時間かけて静脈内に点滴投与しました。
- 本治療は、採血から投与までの2週間間隔で最大で6回行いました。
活性化自己リンパ球療法の症例数
4つの領域におけるQOL変化
活性化リンパ球療法を重ねるにつれて4つの領域におけるQOLの有意な上昇が認められました。
全体的なQOL変化
QOL上昇が認められた症例は飼い主様の治療に関する満足度も高い傾向にありました。
まとめ
- 客観性を持つQOL評価法(CHQLS-15)を適用することにより、活性化自己リンパ球療法はがん罹患犬のQOLを改善することが証明されました。
- その機序として、活性化リンパ球によって産生される内因性オピオイドの関与が示唆されました。
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