J-ARM版 獣医細胞治療ガイドライン(案)
平成25年10月7日 ver.2.2 株式会社J-ARM
目次
1.目的
2.対象疾患等
3.投与量、投与部位、投与間隔、投与細胞数
4.基本原則
1 倫理性の確保
2 有効性及び安全性の確保
3 品質等の確認
4 インフォームド・コンセントの確保
5 公衆衛生上の安全の配慮
6 情報の公開
7 個人情報の保護
8 倫理審査委員会
9 培養施設の基準
10 細胞の安全対策、品質管理システム等
第1 目的
獣医再生医療は、臓器機能再生等を通じて、患畜の健康の維持並びに疾病の予防、診断及び治療に重要な役割を果たすものである。この指針は、こうした役割を鑑み、獣医再生医療が適正に実施及び推進されるよう、科学的知見に基づいた有効性及び安全性を確保するために、動物再生医療臨床にかかわるすべての者が遵守すべき事項を定めることを目的とする。
第2 対象疾患等
細胞治療の対象は、病気やけがで失われた臓器や組織の再生を目的とするものであること。
1 重篤で生命を脅かす疾患、身体の機能を著しく損なう疾患又は一定程度身体の機能若しくは形態を損なうことによりQOL(生活の質)を著しく損なう疾患であること。
2 細胞治療による治療の効果が、現在可能な他の治療と比較して優れていると予測されるものであること。
3 被験者にとって細胞治療により得られる利益が、不利益を上回ると十分予測されるものであること。
4 現在までに、行われている獣医再生医療は、がん免疫療法(CAT療法、DC+CAT療法)、脊髄損傷(椎間板ヘルニア、脊髄梗塞)、骨折癒合不全、小脳梗塞、心筋梗塞、水頭症、腎不全、腎炎、肝不全、肝炎、自己免疫疾患、関節炎、蹄葉炎、腱炎、等である。
がんの中でも、血液内にがん細胞が混入するような、末期のリンパ腫やT型のリンパ腫、血液のがんである白血病、敗血症等、血液にウイルスや細菌の感染が疑われるケース等は禁忌である。
第3 幹細胞の投与量、投与部位、投与間隔、投与時間、投与細胞数
脂肪幹細胞の静脈投与の場合、1回の投与量を1×10^6個/kg B.W. (体重5kgの場合およそ500万個)を超えないようにする。(肺塞栓や虚脱、吐き気等を引き起こす可能性がある)患部に直接投与する場合(脊髄腔内、皮下注射、腹腔内、各臓器)においては、この限りでない。
生理食塩水の代わりに、ACD-A液やヘパリンを入れる事で細胞の凝集阻止が起こり、詰まりにくくなる報告もある。静脈点滴の場合30分以上の時間をかけ、できるだけゆっくりと注意深く点滴する必要がある。また点液後3時間程度は様子を見て、退院させる事が重大事故を回避するためには必要になる。
第4 基本原則
1 倫理性の確保
臨床医、再生医療研究者等は、生命倫理を尊重しなければならない。
2 有効性及び安全性の確保
細胞治療は、適切な実験により得られた科学的知見に基づき、有効性及び安全性が予測されるものに限る。
3 品質等の確認
細胞治療に用いるリンパ球、樹状細胞、幹細胞等は、その品質、有効性及び安全性が確認されているものに限る。
4 インフォームド・コンセントの確保
細胞治療を実施する場合には、被験者及び提供者となるべき者のインフォームド・コンセントを確保しなければならない。また、インフォームド・コンセントを行う者は、研究責任者の指示を受けた臨床医であって、原則として、獣医師でなければならない。
5 個人情報の保護
被験者等に関する個人情報については、匿名化を行った上で取り扱うものとする。それぞれの医療機関は、保有個人情報の取扱いに当たっては、個人情報の保護に関する法律をを遵守する必要があることに留意しなければならない。研究者等及び倫理審査委員会の委員は、獣医再生医療を行う上で知り得た被験者等に関する個人情報を正当な理由なく漏らしてはならないもの とする。その職を退いた後も、同様とする。
6 倫理審査委員会
倫理審査委員会は、倫理的及び科学的観点から総合的に審査できるよう、次に掲げる者を含めて構成されること。また実施計画書の適合性について審査を行い、実施等又は継続等の適否、留意事項、改善事項、中止等 について、意見を述べること。
1 分子生物学、細胞生物学、遺伝学、臨床薬理学又は病理学の専門家
2 細胞治療が対象とする疾患に係る臨床医
3 法律に関する専門家
4 生命倫理に関する識見を有する者
5 男女両性により構成され、かつ、複数の外部委員が含まれること。
6 審査が適正かつ公正に行えるよう、その活動の自由及び独立が保障されていること。
7 その構成、組織、運営及び細胞治療の審査等に必要な手続に関する規則が定められ、公表されていること。
7 培養施設の基準
培養施設は、次に掲げる要件を満たすほか、基本原則を遂行する体制が整備されていなければならない。
1 細胞の採取及び保存に必要な衛生上の管理がなされており、採取に関する十分な知識及び技術を有する研究者を有していること。
2 調製される細胞の特徴に応じ、細胞の生存能力を 保ちつつ無菌的に調製できる構造及び設備を有していること。細胞の調製及び保存に必要な衛生上の管理がなされており、調製に関する十分な知識及び技術を有する研究者を有していること。
3 細胞の取り違えが起こらないよう、設備上及び取扱い上の配慮がなされていること。
4 不適切な調製がなされないよう、調製に従事する研究者への教育及び訓練がなされていること。
5 被験者の病状に応じて必要な措置を講ずる能力を有する研究者を置き、かつ、当該措置を講ずるために必要な機能を有する施設を備えていること。
8 細胞の調製段階における安全対策、品質管理システム等
1 標準操作手順書:研究者等は、調製工程において行われる各操作について、標準操作手順書を作成するものとする。また、標準操作手順書の作成に当たっては、滅菌等の操作について、あらかじめ、予備的操作等により、評価や検証を実施するものとする。なお、事故等の緊急時の作業手順についても確立しておくものとする。
2 最終調製物の品質管理の試験として、次に掲げるような項目について実施するものとする。 (1)回収率及び生存率 (2) 確認試験 (3) 細胞の純度試験 (4) 細胞由来の目的外生理活性物質に関する試験 (5) 製造工程由来不純物試験 (6) 無菌試験及びエンドトキシン試験
3 研究者等は、細胞等とともに最終調製物の一部を構成する細胞以外の原材料(マトリックス、医療材料、スキャフォールド、支持膜、ファイバー、ビーズ等)がある場合には、その品質及び安全性に関する知見について明らかにするものとする。
4 ISCF, ISSCRが策定する幹細胞の臨床応用に関するガイドラインの科学的、臨床的、倫理的行動の一般的概念に基づいた推奨事項に準拠し、治療を遂行する事が望ましい。
ISCF (International Stem Cell Forum)
http://www.stem-cell-forum.net
ISSCR (International society for stem cell research)
http://www.isscr.org
平成25年10月7日 ver.2.2 株式会社J-ARM